2023-1-15(日)

長らく時間をかけて読んでいた、西沢立衛『建築について話してみよう』を読み終えた。時間をかけるボリュームではないのに積読を挟んだら、気がつけば数ヶ月経っていた。一昨年末、西沢氏設計の「森山邸」に行ったことを思い出していた。アパートメントの機能を解体して、ボリューム違いのいくつかの棟が並んでいる集合住宅。この建築に訪れたとき、すごく希望が持てた。この先もこんなに美しいものが見たい、と思わせるような建築だった。公共建築などの大きい建築でそのように思うことはあれど、住宅建築でそう思えたことが希望だった。敷地に踏み入れると風景そのものが変わる。全身で感じる感覚が変わる。この身体感覚のなかで暮らすことは人間のなにを解放させるのだろうかと思った。SANAAのいう「環境」を身をもって感じた。また単に家賃収入を得ようと思ったら、たぶんこの建築にはならない。森山さんの美意識が全体に流れているようだった。施主である森山さんは西沢さんに依頼するくらいだから、そもそも文化的素養がかなりある方だと思うけれど、実際にご自宅を案内してもらうと、そこかしこに映画のディスクや美術書、アートピースがあって、それが嫌味なく生活に溶け込んでいた。潔癖的な美しさの保ち方ではなく、劣化や生活感のちゃんとあるのだけど、この空間全体が愛されているのだと感じた。住宅建築をあまり見たことないこともあるけれど、建築を見て、そんなふうに思うことはあまりなかった。その時間を反芻していた。