2023-4-9(日)

早朝の音を求めて、高木正勝を流す。ホテルオークラのレシピでスコーンをつくる。強力粉のなかでバターをつぶしていく作業はスコーンをつくるときにしか発生しないのですきだ。スコーンを焼くと部屋がスコーンの香りがする。家に帰ってきたら毎日スコーンの香りがしていてほしいと思う。

窓から明るい光が差し込む。焼きたてのスコーンとコーヒーと朝の光が希望。大崎清夏さんのツイートを見て、坂本龍一のライブ映像を流す。おごそか。おごそかなまま、顔のパックをしてベランダに出たらお隣さんに見られた。突然見かけてしまうパック顔はこわいだろうな。きっとこのピアノソロも聴こえているだろう。こわいだろうなあ。まだおごそかなままメイクに取り掛かる。

メイクを終えて身支度を整えて家を出る。晴れているけど、旅行に行った朝みたいに空気が冷えてる。電車に乗っていると無性にceroorphansが聴きたくなって二回流した。そういえば去年第1回の日記祭に向かう日はスピッツを聴いていた。曲は忘れてしまったけど、あの日も同じようによく晴れて、小田急の窓から見る景色によくあっていた。

会場に着くと浮さんのライブ直前で、スタッフさんに「整理券まだありますか!?」と大声で聞いてしまった。大丈夫ですよー、と中に案内してくれた。浮さんはとても気になっていた。音源も聞いていたけど、この人はきっとライブの人だと思っていた。いつか聞く機会があるだろうと思っていたけど、それが日記祭でうれしかった。ああわたしがすきな曲だと思った。近くないけど遠くないけど近い、生活の歌。月日のスタッフもしているという浮さんが自身の日記の朗読をした。東村山から出なかった日の本人しかわからないような日記がよかった。ライブ後、植本さん、金川さん、滝口さんブースに一目散に向かう。植本さんと滝口さんの『ひとりになること 花をおくるよ』がすばらしくて、今回の『集合、解散!』もたのしみにしていた。サインをいただくときに「お名前書きますか?」と聞かれて「恥ずかしいので大丈夫です」というと「そんなに恥ずかしがらないで」と滝口さんに言われた。とても余計なことを言った気がする。お三人を目を見て「ありがとうございます」と言えてよかった。常連の途中さんブースにいくと、寝生活さんの表紙をやられていたデザイナーさんにたまたま会う。なんとなくいつか会える気がしていたのだけど、偶然途中さんブースで会えたのがうれしかった。Twitterの人に会うと思わなかったと言われたけど気持ちはよくわかる。会ってはじめて本当に実在したんだなって思う。会場をゆっくりまわる時間的余裕と金銭的余裕がなく、少しだけになってしまった。買うことを検討もできない本を手に取るのはやっぱり申し訳ない。でも少しでも話せて楽しかった。日記を書くこと読むことの楽しさは、ひとりひとりその楽しさ自体が違っていることだと思う。数ヶ月前は自分が出店者側だったなんて。ありがたさと、すげーと、信じられなさと、なんかとにかくふわふわとした高揚感を抱えながら、ボーナストラックから下北沢駅に向かう遊歩道を歩いた。冬にはなかった花が咲いていた。

代々木公園。近くに桜の木が一本ある。品種がわからないねとしばらく話していた。一気に冷え込むことを予測して着込んできた蛍光グリーンのニットのせいで汗ばんでいる。蛍光グリーンとあわせて引いた、グリーンをアイシャドウは消えていた。友だち二人が白パーカーに黒スキニーを着ていて、示し合わせたようにかぶっていた。西アジアから東でいちばんうまいらしいケバブはほんとうに驚くほどうまい。ホテルオークラの(レシピの)スコーンはやっぱり評判がいい。秋山竜次の『TOKAKUKA』をどうしても聞いてほしくて、Bluetoothスピーカーに繋いだ。そこからDJをやることになり『プラスチック・ラブ』を流す。おのおのがプラスチック・ラブのすばらしさについて語りはじめる。わたしたちは軽音同好会の集まりでこういう景色を見ると懐かしくなる。音楽の趣味は似ているようで似ていない。夕方寒くなって、テキパキした友だちが片付けをはじめる。わたしは余った枝豆をおいしいと言いながら食べていた。地下鉄の空気口で「あったかい」と暖をとっていたら「それをやりはじめたらもうおしまいだよ」と言われた。

なにかをずっと話したり聞き続けていたのに、あまり覚えていない。でもたしかに楽しかった。たぶんそのうちまた会う。

家に着いたらすぐ寝ていた。起きたら後輩が企画で関わった仕事を教えてくれた。ちゃんと着実にこれまでの努力を実らせているようですごい。しばらくすると、またべつの友だちから連絡がきた。「元気?」と聞かれて答えると「生存確認、完了!」と返信があった。うれしかった。どうというわけでもないけれど、あなたのことを気にかけています、というコミュニケーションがもっとあっていい。