2022-12-14(水)

鶯谷で待ち合わせ。駅につくと、彼が先にいる。「あ、髪黒くなった」「うん、暗くした」「まっすぐになってる」「うん、まっすぐにした」似合う?と聞きそびれた。彼のポケットに手をつっこむ。手が冷たいと言われたので、じゃああっためてよと返すと、彼はわたしの手を揉み込むようにさする。いつも道。鶯谷のホテルは平日でも意外と混んでいるということをどれくらいの人が知っているのだろう。一軒めは満室、二軒めも残り二部屋だった。シャワーを浴びて二人でベッドに寝そべる。わたしが彼を抱きしめるかたちになると、すぐさま彼はわたしを抱きしめるかたちに体勢を変える。わたしをぎゅっと抱き締めて、頭を撫でる。わたしはそれにあわせてひっつく。最近はずっと忙しそうで、会ったあともすぐ仕事をしているようだったけど、今日はそこまでもないみたいだった。いつもより長めにおしゃべりした。ねえ、旅行いこというと、いいよと言われた。意外だった。なるべくエロいところがいいねと言うと、彼はどこだろと答えた。今日は、今日もだけど、とにかくよかった。いままでも随一によかった。彼が冗談で「キメセクしよっか」と言っていたけど、こんな相性のよさで、キメセクしたらほんとに死んでしまいそう。ほんとに気持ちいいと、手も足も脳も痺れて動けなくなってしまうということを、わたしは彼としてはじめて知った。するたびに、わたしは今後どうすればいいのだろうと思う。だれかに恋に落ちたとき、わたしはぜったいこの人のセックスと比べてしまう。この人のほうが気持ちよかったと思いながら、わたしはこの先どう生きるのだろうか。彼はお互いほかの人と付き合ってもしようよという。わたしはそれはしない。したくない、できれば。帰り道、彼が「おれはまわりに難しいやつだと思われてる」と言った。「あなたは、変で変わった人だけど、難しい人だと思ったこと一度もない。あなたが、こだわることは、許せるというか、わかる」「うん」「わたしは、あなたが数学の証明をずっとひとりでやり続けた話、すきだよ」彼がわたしの目を見て笑った。