2023-1-26(木)

歯医者に向かうと、スクリーンがかけられていて、まだ休憩中かと思ったら、今日は休診日だった。予約は明日だった。今日の予定は夜の寺尾紗穂と下津光史のツーマンだけになった。

ライブハウスにいくのは小さければ小さいほど緊張する。もうライブハウスも年下ばかりなのに、生き慣れない大学生みたいな垢抜けないオーラを、身から剥がすことができない。ドリンクで炭酸水を選んだら、ソフトドリンクだからフードがもらえると言われて、じゃがりこのじゃがバターをもらった。冬とライブハウスは相性が悪い。片手にコートとストール、片手には先ほど買ったドリンク。両手が塞がる。スマホを見ることも諦めて、なにかするでもなく時間がすぎるのを待つ。

出順は下津さんが先だった。下津さんのこと、きっと人間的には好きではない(友だちにはなれないという意味で)けれど、下津さんの曲や歌がすきだ。創作物という媒介を通してであれば、人は分かり合える。下津さんの歌を聴いてると、すべてが持っていかれそうになる。下津さんを見ていると、鳥、高く空を飛ぶ鳥を思い出す。あの軽さを腹に感じながら、色とりどりに照明がかわるステージを見つめる。

今日は寺尾紗穂が目当てだった。彼女の曲をいつか生で聴きたいと思っていた。去年日記を書きはじめたとき、寺尾さんの日記を読んでいて、ライブに行ってみたいと思っていた。ぽつぽつとゆるやかに、でも思ったより饒舌にMCをしていたのが印象的だった。寺尾さんは下津さんとは対照的に、演奏の様子は曲の媒介者であるような振る舞いにみえた。その曲と演奏の距離が心地よかった。下津さんは炭酸水だけど、寺尾さんは水だ。ふたりのツーマン、不思議な夜だ。

寺尾さんが「マヒトゥが今日来るかもって言ってたんだけど、マヒトゥいる?」というと「います〜」と聞き覚えのある声がする。「マヒトゥ、今日ギター持ってる?」「持ってない」「了解ですー」というやりとりが会場に響く。寺尾さんの了解ですーという言い方が好きだった、寺尾さんと下津さんのセッションに最後はマヒトも加わることになった。真っ赤な人がステージにあがる。真っ赤なコートを着ていて、真っ赤なコートだと思った。下津さんとマヒトさんの自由さにも寛容に対応できる寺尾さんの懐深いピアノ。自由に振る舞う二人に、安定感のある伴奏と歌声。もっとむちゃくちゃになったらどうなんだろうな、なんて考えてしまう。おもしろい掛け合わせで、すばらしいものだった。