2022-12-16(金)

具合悪くなったら、休息できるのになって思ったら、ほんとうに具合悪くなってきて、外に出れなくなってしまった。仕事に穴。少し休む。起きる。仕事する。ネットの調子が悪くて、ひとつのメールをつくるのに倍以上時間がかかる。おまえもかあ(カウボーイビバップのスパイクのセリフである)。

好きな人と本に書いた人は、いま日記内では日記本の協力者と呼んでいる。彼を呼ぶ肩書きはそれがいちばんしっくりくるから。協力者は阿佐ヶ谷の雑踏にツテがあり、『ティンダー・レモンケーキ・エフェクト』を置いてもらえないか、二人で相談しにいくことにしていた。徒歩で阿佐ヶ谷の駅向かう。駅近くでラインを開くとすでに10分前に到着しているらしかった。そしてわたしはナチュラルに遅刻していた。その旨を伝えると「もーまんたい」と返信がきた。二人で大通りを登る。わたしはこの横の道路の名前を知らない。M-1グランプリでだれが優勝するかという話を遮って、お店にいったらどうしたらいい?と聞く。顔見知りだから趣旨を説明するよと言っていたので、とりあえず任せることにした。

店主と彼が挨拶している。男女が二人でいるとカップルだと思われる。「ちがいます」「マブです」と言い合う。ひとまず店内を見る。というか見たかった。手に取ったカーディガンを勧められるままに着てみると、いま着てきたみたいに似合っていたので購入を決める。彼がいちいち「靴下どこの?」「ユニクロマルニ」「靴は?」「ZARA」「スカートは?」「古着」と聞く。はーお洒落だわ、あ、いつもお洒落だね、と言い直していた。せやろ。金ないが口癖の彼も服を見ている。今日も金がないと言いながら買っていた。今日どうしたの?と店主さんに聞かれたタイミングで本題の相談。「我々、実はTinderで会いまして、で、その中で日記を交換しておりまして」と本の説明をすると「え、いいすよ、置きますよ」と快諾してくれた。ぜったいおもしろいじゃないですか〜、とひと盛り上がり。雑踏に置いてある本はどれも惹かれるものばかりだし、雑踏にくるようなお洒落メンズに読んでほしいという気持ちがあった。日記祭でもそういう人がふらっと立ち寄って買ってくれたから、Tinderよもやま話として、面白がってくれるといいな。とてもいい店主さんでたのしかった。店を出て「いい人だね」というと「そうなんだよー」と言っていた。

阿佐ヶ谷でPayPay30%還元を使って適当に飲むか、と店を探す。青森、八戸とでかでかと書かれた2階の店を上がる。入るとおばあちゃんと言って差し支えないであろう方と、女の人が迎え入れてくれる。席に着くと「なんか旅行きたみたいな店だね」と彼がいう。わかる。並べられただけの椅子と机。店内の大きさにしては大きすぎる2台のテレビモニターには、青森のイメージビデオのようなものがかかっている。その映像も無駄にクオリティが高い。地元でおばちゃんがやってるみたいな雰囲気があってよかった。

刷り上がった本を渡す。一応共著であるし、ほんとはいちばん最初に見せたかったが、印刷もギリギリだったから、このタイミングになってしまった。日記本に書かれている彼自身の日記と、彼に関する私の日記の記述はすべて確認済みだけど「セフレの話とかは送ってなかったから、たぶんはじめて読むんじゃない?」と言ったら笑ってた。これから本をじわじわ売っていきたいというはなしと、これからの展開。まあおもしろがれるところまでやってみたいよね。中央線に住んでいるのに、越川に行ったことがないというので移動する。店内に設置されたちいさなテレビ画面を見て、彼が「ホームアローンやってるじゃん」という。「そうなんだ」と答えると、次の瞬間にギズモが映る。いやこれグレムリンじゃん。グレムリンか。彼がポテトフライを頼んで「え、モスタイプじゃん」と萎えていた。「いやモスがおいしいでしょ」「ほんと?」と言いながら、いざ口にすると「うまい!」と言っていて、こいつなんなんだと思った。ポテトに添えられたケチャップにソースを足す。ケチャップにマヨネーズはオーロラソース。ケチャップにソースはなんなんだろうねというと、スマホで調べてみたけど、それらしい回答は得られなかったらしい。これでハンバーグのソース作ったよねと言ったら、共感を得られて安心した。しばらく飲み進めていると、彼の様子がおかしい。目を擦り出して、目には涙を溜めている。「なんかのアレルギーかもしんない」と言った。越川ってたしか猫とかいたような?酒に酔っていると、人間をちゃんと心配できない人間なので、なんだか適当な対応をした気がする。とりあえず終電を調べて、電車に乗ることにした。「大丈夫?」と聞くと「うん、帰れたら一応連絡するわ」と言った。

一人で家まで歩いていると、だれかと電話したくなった。酒に酔って、だれかと電話したくなるタイプの人間。グループ電話をかけるけどだれも出ない。そりゃそうか。するとそろそろ飲みたいなと思っていた友だちから、ちょうど連絡がきていた。そのまま電話をかける。えー!電話くれると思わなかった!と歓声をあげられる。普段、わたしどんな塩対応なんだ。ねえ、好きな男どうなったの?と聞かれたので、友だちになった、一緒に本出したよ、さっきまで飲んでたと答えた。意味がわからないと言われたけど、そもそもTinderで日記を送っていることすら意味がわからないので、あまりつっこまれなかった。わたしの友だちは適応能力が高い。好きな男ができると、ぜんぜん遊んでくれないじゃーんと言われたけど、そんなことないよって答える。いやむしろ好きな男がいるときしか、うちら会ってないやん。ハタチのときから遊びが成長しなくてうける。まあとりあえず飲もうねと言って、電話を切った。

協力者からは家着いたとラインがきていて、律儀だなと思った。通販サイト用に写真を頼んでいるので、そのイメージをいくつか送る。念入りにありがとうというと「どうした?」と聞かれる。わたしは、感謝を伝えることを忘れがちだから、重めに伝えておいた。